あの日、あの時、あの場所で、きちんとした選択をしていれば…。明暗を分けた、そんな2人の話をしましょう。
ある中学校のサッカー部に所属する男子のAと、バドミントン部に所属する女子のB。同じクラスの2人は中学1年生のときから、定期試験における学年順位を競っていました。一方が学年1位なら、もう一方は2位。順位についてお互いに言葉を交わすことはありません。しかし、どこからか相手の順位は伝え聞くものです。そんな2人のライバルストーリーは、その学年なら誰もが知っているほど有名でした。
論塾に入ってから、変わった
中学2年生になり、Aが論塾にやってきました。進学校ながらサッカーの強豪である都立高校に、小学生の頃から憧れていたのです。その高校に合格するためなら、準備は早いほうがいい。両親も、本人も納得のうえでの入塾でした。
すると、中学校におけるAとBのライバル関係が少しずつ変化しました。塾通いの成果もあって、Aが中学2年生の1学期中間・期末試験、2学期の中間試験で3連勝。サッカーの練習と勉強の両立は厳しいものでしたが、憧れの高校のメンバーとしてプレーできるのなら、頑張れるものです。日々の勉強もますます充実してきました。
さて、もはやライバルともいわれなくなってしまったB。3連敗し、学年2位をも転落してしまったBが考えたのは、Aが通っている論塾は、どのような勉強をしているのか、自分の目で確かめること。そして中学2年の秋に、Bは論塾の体験授業を受けに来たのでした。
一度は足を運んだのに
講師からすると、Bはたしかに優秀でした。しかし、塾通いをしていない公立中学生に典型的な、学校ワークができれば十分だ、定期試験なら周りの連中には勝てるだろうという自己評価の甘さを感じました。また、量をこなして質を高めるといった練習がとても不足していることが目立ちました。
Bは体験授業の翌日に、同じ部活に所属し、やはり論塾の塾生である友人に、「私も論塾で勉強したい」と打ち明けました。ただ、気にかかるのはお母さんの考え。どうすればいいか分からないと苦笑いしていたそうです。
その夜、Bのお母さんから論塾に電話がありました。授業曜日や受講料などをひと通り説明すると、お母さんは、「中学2年生の秋から塾通いするのも、中学3年生になってから入塾するのも、たいして変わらないんじゃないですか?」とバッサリ。学校に通っているのだから、それ以上の教育にはできるだけカネをかけたくない、という話もしていました。
結局、Bのお母さんは、入塾を認めてくれませんでした。数日後、再び電話があり、「中2の秋から塾通いする必要なんてない。何よりも、本人のヤル気が感じられないので」と、どこか冷めた声。
体験授業のあと、学校では毎日のようにBが「私も論塾に入ってAに勝つんだ」と、やる気に満ちて話していたのとは、大きな違いです。
憧れは、つらい受験勉強をも超える
そして月日は流れ、2人は高校生に。
Aは引き続き論塾で勉強をし続け、憧れのサッカー強豪校に合格しました。独自問題作成校に対する受験勉強は決して楽ではありません。弱気になって、志望校を下げれば楽になるのではないか。そう迷ったときもありました。しかし憧れというのは、そう簡単には諦められるものではありません。その高校のメンバーとして、お正月の全国高校サッカーに出場するんだ、という強い想いとともに、合格を勝ち取りました。
入学後もAは、勉強と部活の両立を果たし、学年で上位10%という順位を保っています。サッカーでは、強豪校ならではの内部競争を勝ち抜き、センターバックのレギュラーとして活躍しています。
馴れ合い、流され、昔の影もなく
Bはというと、中3春にお母さんが選んだ別の学習塾に通い始めました。その塾は同じ学校の生徒が多く、塾内でもコンビニの店先でも群れています。自習室でもLINEをしていたりと、馴れ合いの雰囲気が強いので、だんだんと流されていってしまったという評判です。どうやら伸び悩んだことで意欲も切れてしまったとか。中学1年生のときに、論塾のAと学年1位を競い合っていた影はもうありません。
高校受験は、志望校を下げて下げて、かろうじて都立高校に合格しましたが、春先に周囲に語っていた志望校とは程遠く、Aが合格した高校と比べれば、偏差値は実に8ポイントも差があるところです。そして高校入学後は、もはや勉強は後回し。定期考査では追試の常連で、学期ごとに保護者呼び出しがかかっているというのが、その高校内でも、中学時代の同級生の間でも有名な話だそうです。
あの日、あの時、あの場所で、きちんとした選択をしていれば…。
中3春まで待ったのは、子どものため? 親のため?
2人の明暗を分けたのは、本人の選択より、保護者の選択だったように思います。
- 中2秋に入塾するのも、中3春に入塾するのも、たいして変わらない。
- 塾通いは費用がかかるから、入塾時期はできるだけ先送りしたい。
親のそんな考えが、伸びる機会と向上する意欲をBから奪ってしまったように思えてならないのです。
いま、中1または中2のお子さんを持つお母さん、あなたなら、どうしますか?
<初公開:2016年、増補:2021年>