論塾の見立ては、残念ながら当たってしまいました。

2021年春、論塾は「中学生において、英語の学力は今後、おそろしいぐらいに下がっていく。全く向上することはない」と述べました。

そしてこの1年間、塾生だけでなく、塾生たちがそれぞれ通学する複数の中学校の様子を注意深く観察してきました。

塾生たちには、学校の授業内容や指導方法、それに対する感じ方を定期的に聞かせてもらいました。

公立・私立いずれも現場に立つ英語の先生に聞き取りをしたり、放課後に中学校で生徒の学習を支える「学習支援員」をしている方にも定期的に話をうかがったりしました。

そのうえで、「もはや公立中学校の英語教育は、まったく期待できない」という結論にいたりました。

あらためてお話しします。悪いことは言いません。中学校の授業はもう期待せず、手遅れにならないうちに、確実に英語の学力を高めてくれる進学塾、または学習塾を探したほうが良いと思います。

すでに英語が壊滅的な中学1年生

以下のグラフをご覧ください。論塾の塾生が通学している中学校の1つにおける、学年末試験の得点分布表です。これは、中学1年生。

英語は「できる」「できない」の二極化が進む

中学校で発表された英語の平均点は49.0点。とはいえ、データ数168人のうち、平均点を超えたのは78人。これは全体の約47%にすぎません。90人、約53%が平均点以下なのです。グラフを見ると、明らかに低得点側に偏っています。

さらに、全体の20%にあたる33人が80点以上だったのに対し、全体の42%にあたる70人は、その半分の得点である40点にも届かないのです。

英語が「できる」生徒と、英語が「できない」生徒の二極化が一目瞭然です。そして、下位層が多くを占めています。

このように指摘すると、「これは、いわゆる学習困難校だから、英語に限らず、全体のレベルが低いのだ」考える保護者もいます。しかし、そう断じるのは早計です。

数学は、それほどでもない

同じ学年末試験の数学では、平均が51.5点。ただ、今度は50点を超えた生徒が全体の53%、50点未満の生徒が47%とその割合は英語と逆転します。グラフを見ても、明らかに高得点側に分布が偏っています。この傾向は国語や社会・理科でも見られます。

つまり、明らかに英語だけ、習熟度が低いといえます。

そして、この傾向は、塾生が通う羽村市・青梅市の各中学校でも、そして中1生だけでなく、他学年にも共通して見られます。

定期試験を易しくすることで、得点させている

「中学生において、英語の学力は今後、おそろしいぐらいに下がっていく。全く向上することはない」という見立てに加えて昨春、論塾がさらに予想したのは、各中学校における定期考査・定期試験は、逆に易しくなるだろうということでした。

というのも、先ほどご紹介した学年末試験における英語・数学の平均点は、あまりにも低すぎます。これは生徒の習熟不足であると同時に、試験をつくる側の設計ミスともいえます。

さらに、このまま定期試験で生徒が得点できないならば、それはそれで、英語の先生の指導力不足ということにもなります。

よって、定期試験の出題レベルを下げることによって、生徒に得点させやすくするといった操作が行われるのではないか。論塾は、そう考えたのです。

この予想も、残念ながら的中してしまいました。この1年で、定期試験の難易度は、かなり下がっています。

こちらは、先ほどとは別の中学校における2年生の学年末試験の分布図。

中学校によれば、英語の平均点は61点。数学は60点。先ほどの中1生よりはまともな点数ですが、いずれの教科も、平均点以上の生徒が目立ちます。論塾では試験問題をすべて見せてもらいますが、明らかに易しいのです。塾生は、日ごろのレベルよりはるかに低いので、高得点も当然だと逆に不満顔。

また、ある中学校では、『定期試験対策プリント』と称して、「そのプリントからそっくり同じ英文、同じ設問で70点分出題するから、事前に勉強しておきなさい」という指導をしています。それで平均点が10点以上アップしたという結果も見られました。

「ウチの子は、定期試験で平均点は超えているから大丈夫」と考えるのは、親が自分を安心させるための、根拠のない思い込みです。

放課後学習支援員の方も、英語の学力低下に驚いている

以上のようなデータを踏まえ、毎週特定の曜日の放課後に、空き教室を使って希望する生徒に勉強を教えている「学習支援員」の方に、現場ではどう感じるのかと尋ねてみました。すると、指導経験が長い学習支援員の1人は、このように答えてくれました。

「これまで、質問があったり、または宿題を手伝ったりする教科といえば、まず『数学』でした。しかし、この1年間は明らかに、英語が分かっていない。中3よりも中2,中2よりも中1がより深刻です。英語担当の先生たちにもそのことを伝えていますが、先生たち自身も、実は同じことを感じています」

「アクティビティが、うざい」

肝心の中学生は、どう感じているか。

中3、中2の塾生たちは、はっきりと「文の作り方、教科書本文の説明が、ほとんど無くなった」といいます。とりあえず要点がまとめてあるようなプリントが配布され、先生に言われるがままに空所に単語や日本語訳を記入したら、もうおしまい。

「何がポイントで、何を覚えて、どのように文を組み立てるのか。学校の授業では、さっぱり分からない」

論塾の塾生は、学校の授業にあきれています。

では、何をやっているのか。

塾生たちは、「とにかくアクティビティが多い」と不満顔。2人1組になって会話をさせられたり、決められた時間のなかで生徒どうしが英語で質問し合い、多くの答えを集めてきたら、高ポイントがもらえるといった「実践的なコミュニケーション」です。

ある中1生は「うざい」と言っています。何のためにやるのか、何のトレーニングになるかも分からないし、誰も積極的にやろうとしない。ものすごく冷ややかなムードになるそうです。

また、ある中2生は「高ポイントだと成績に加点されるから、みんな『ずる』をしている」と嘆きます。本当は英語で相手に質問し、英語で答えなくてはならないところを、お互いにポイント稼ぎのため、日本語でやり取りし、それがクラス中に蔓延しているとか。「楽しそうなのは、先生だけ」だそうです。

「塾なしでは、英語の勉強にならない」

論塾の英語指導は、とても特徴のあるものですが、各学年に教えるカリキュラムは原則として、通年テキストの目次にある単元どおりに教えています。

もともと、中学校で採用している英語教科書が羽村市と青梅市では異なります。教科書会社が異なると単元の指導順序も異なるので、いずれにも偏ることなく、論塾では『中学実力練成テキスト』の単元どおりに指導しているのです。

大半は、①論塾の授業が先行し、習熟したうえで、学校でその単元の授業が行われます。しかし、1年のうちいくつかは、②学校の授業が先行し、論塾での指導が後追いになる単元もあります。

すると、①の場合、塾生たちは「自分は、塾で教えてもらっているから大丈夫だけど、学校の授業内容は塾の半分にも満たない」「周りの友だちは全然分からないからと、いつも自分に質問してくる」と嘆きます。

②の場合は、「学校で習ったとはいえ、塾で教えてもらって、はじめて内容が分かった」「学校の教え方と、塾の教え方がぜっんぜん違うから、学校のはさっぱり分からない」と、やはり嘆いています。

これが現実です。

結論:英語のために、やっぱり塾探しをしてください。

「○○をしないと、こんなに悪いことが起こるよ」という言い方は、いまも大嫌いです。しかし、この1年の英語教育を見ていると、やはり言わずにはいられません。

手遅れにならないうちに、確実に英語の学力を高めてくれる進学塾を探してください。当然、論塾以外でも構いません。

また、中1でも中2でも、「このままでは英語はダメだ」と思ったら、1日でも早く学習塾や進学塾に入って、英語を基本からやり直してください。

論塾は引き続き、英語の公教育に強烈な危機感を抱いています。