論塾の国語は、ほかの塾の国語とちょっと違います。

中学1年生、2年生の国語では、
「次の文章を読んで、あとの問いに答えよ」
といった問題演習は、一切やりません。

出発点は読書。文章を精読し、辞書で言葉を調べ、論理を自分で並べ替え、文章を記述していきます。それが論塾の『読書と要約』の授業です。

14歳の教室

2021年度は、若松英輔(著)『14歳の教室 どう読み どう生きるか』(NHK出版)を1年かけて読み、要約をしていきます。

約200ページの単行本である『14歳の教室 どう読み どう生きるか』には、第1講から第7講までの各講に、10〜15の小見出しがふられた文章があります。小見出しがついた2〜4ページの文章をひとつのまとまりとして、そこに含まれる形式段落ごとに要約しています。

一生使える要約の方法

では、どのように授業を進めているか、要約の手順をお伝えしましょう。

1,小見出しを確認し、独自の目次をつくる

目次には、章ごとのページ数は記されていても、中・小項目ごとのページ数が含まれていないことがあります。あとで読み返したり、必要な情報に素早くたどりつくためにも、自分で目次をつくるという経験を積みます。

2,小見出しから「問い」をつくる

文章は、ただ漠然と字面を目で追うのではなく、目的を持って文章を向き合うと、より自分自身に引きつけて読むことができます。小見出しは、その文章における要点を簡潔にまとめた言葉のはず。ならば、その小見出しを目にして抱いた印象、不明点、「なんだろう?」という疑問などを書き記します。それから、その疑問に対する答えを探しながら読み進めます。目的を持った文章の読み方を身につけるのです。

3,文章を音読する

読書といえば、黙読が一般的です。ただ、いくら字面を目で追っていても、心はどこかほかの方に向いていて、たしかにページは繰っていても、内容が全然自分に入ってこないという経験があるでしょう?

音読は、少なくとも文章に意識を集中し、確実に言葉を追っていかなければならない読み方です。また、読み方の分からない言葉は、自分の知らない言葉なのだと気付くこともできます。

4,形式段落に番号をふる

行頭をひと文字下げて始まる文章が形式段落です。最低限の文章のまとまりである形式段落ごとに要約する準備として、行頭に番号をふっていきます。

形式段落というのは、筆者が意図的に、ひと文字下げています。自分が伝えたい内容が前の文章から続いているなら、わざわざ改行することも、字下げすることもないはず。

いくつかの形式段落をまとめた意味段落というのもありますが、まず1文の意味をしっかりつかみ、複数の文から成り立っている文章、つまり形式段落の意味をつかみ、形式段落が集まった意味段落の内容を正確につかむ、というのが「文章を読む」ということではないでしょうか。

5,段落ごとに要約する

試験で「次の文章を読んで、あとの問いに答えよ」というとき。

読書の後で「その本はどんな内容だった?」と尋ねられたとき。

いずれも、全文を引用して答えることはありません。答えるのは、このようなことが書いてあったという要点のはず。要約というのは、文章の要点を自分で文章にまとめることです。

要約するためには、また読む。不明な単語は辞書を引く。要点はどこか、省いても意味がとおる修飾語はどれか。自分で書いた要約文は、その本を読んだことのない人に対しても意味が伝わるか。

この段階で、本文を少なくとも3回は反復して読むことになります。本当に「精読」です。

6,「問い」に答える

段落要約が終わったら、小見出しから立てた「問い」に答えます。文章をきちんと読めたら、その答えがあるはずです。場合によっては、新たな「問い」が生まれるかもしれない。それも記入して、次の文章に進みます。

日本語の論理性と情緒をみとめたい

この1から6までの取り組みがひと通り終わったら、講師が同じ手順で要約したノートと、塾生の要約ノートを交換します。

ここではっきりしておきたいのは、講師の要約がつねに正解だとは限らないこと。

要約の方法は、もちろん詳しく教えています。しかし、具体例をどのように抽象化するか、どの言葉を選ぶかは、一人ひとり異なっていてもよいと思います。また、味わい深い表現があったときには、別の言葉で置き換えるより、そのまま要約文に含めたほうが、より文章の本質を伝えることができるかもしれない。よって、原則として講師は要約文を添削しません。

また、ものごとを多角的・多面的に見るためにも、優劣は一切つけずに、塾生どうしでノートを見せあいます。塾生のそんな考えや感性を大切にしていきたいと論塾では考えています。

大人向けに講座を開いて欲しいという要望も

いま、このような読書指導、要約指導を、保護者にもして欲しいという要望を受け取っています。いずれ、一般の方を含めた大人に対しても、この方法を広めていけたらと考えています。