「いつごろ塾に入ればよいですか?」

論塾のホームページで、もっともアクセスが多いのが、2013年2月初掲載のこの記事です。

それから4年。塾生たちと一緒に毎日勉強し、一緒に中学受験や高校受験、大学受験に挑むなかで、子どもたちや保護者の状況が少しずつ変化している印象を抱きます。

そこで、

「いつごろ塾に入れば、高校受験に間に合いますか?」

という問いについて、あらためて考えてみます。

何をもって受験に間に合うというのか?

まず明らかにしておかなければならないのは、何をもって受験に間に合うかということです。

論塾を開いて、2017年3月で丸5年を迎えます。この5年間で論塾の内外を問わず感じるのは、中学生の向上心や覇気がどんどん薄れていることです。

定期試験や模試において、80点よりも85点。85点よりも90点を目指す。本当は5教科470点を目指していたのに468点しか得点できなかったと涙を流す。ずっと目標にしていた志望校。内申点は基準よりもわずかに低いけれど、本番で得点してこそ本当の実力だと信じ、あきらめることなく、がむしゃらに勉強したうえで挑戦する。

そんな中学生が本当に減りました。

目標点には届かなかったけれど、平均点は上回っているから、まあ、いいか。
偏差値も、前回並みだから、まあいいや。
高校選びも、みんなが都立にいくのだから、自分も都立でいい。
出願の際も、不合格となって周りから冷ややかに見られるぐらいなら、ランクを下げるか、倍率の低いところにすればいいか。

そんな中学生が本当に目立ちます。

そのうえで、「高校受験に間に合う」イコール「どこでもいいから都立高校に合格すればいい」ということであれば、結論は簡単です。

入塾時期なんて、いつでもいい。

中学3年の春に入塾なんて早いほう。夏休みに部活を引退してからでもいいですし、秋でもいい。冬休み直前の駆け込みでもいいでしょう。そもそも、塾通いをしてもいいし、しなくてもいい。

ひとつだけはっきりさせておきましょう。そんな中学生なら、論塾はお断りです。

本当に合格したいなら、まず覚悟を決めよ

論塾において「高校受験に間に合う」とは、「中学3年生の春に、心に思い描いた憧れの高校に、確実に合格する」と定義しています。

中3の春に、偏差値や内申点が届いていようがいまいが関係ない。都立高でも私立高でもいい。自分が言葉にできる明確な理由のもとに、この高校に絶対に入りたいから必死に努力する。難関校であれば、厳しい1年になることを覚悟する。そんな憧れの高校に必ず合格することが、「受験に間に合う」という意味です。

早慶GMARCHなどの付属高校。
国立、八王子東、立川、国分寺などの都立人気校。
それらに本気で合格したいなら、まず覚悟を決めなさい。
「オレは〇〇高校を目指してるんだぜ」だなんて軽々しく言う前に、手を動かしなさい。

論塾は「大丈夫、大丈夫。間に合います」と、無責任な甘い言葉はかけません。

そのような理由から、「いつごろ塾に入れば、高校受験に間に合いますか?」という質問に対しては、「早ければ早いほうがいい」という答えになるのです。

中3よりも中2。中2よりも中1。「中2の秋に入塾するのと、中3春に入塾するのでは、何も変わらない」と考えることなど愚の骨頂。中学生であっても、自分の将来に向けて真剣に考える、着実に準備することに、早すぎるなんてことは一切ありません。焦らず、じっくり、着実に勉強してこそ、子どもたちは伸びます。粘り強さこそ、最強の勉強方法だといえます。

最低限の学力さえ不足している中3生

かつては、中3の夏休みに、部活を引退してからでも、高校受験に間に合うこともありました。しかし最近では、中3の夏でも、これまでにないほど学力が不足していて、基礎もできていない生徒が増えています。

公立中学校の学習指導があまりに薄っぺらいのも原因かもしれません。いまだに「高校なんてスポーツ推薦で入ればいい。勉強なんて二の次だ」という部活動の顧問や、野球やサッカーにおけるクラブチームの指導者も目立ちます。

そんな考えのもとに、中学1年、2年と過ごしてくれば、内申点や偏差値どころか、最低限の基礎学力でさえ身についていない中学生が増えるわけです。

数十年前の価値観では通用しない

同じように、中1や中2から塾通いなんてする必要はない、高校受験なんて中3からで十分だ、そう考える保護者がどんなに多いことか。我が子をそれだけ信頼できるのは、とても見事なことだと思います。しかし、そう考える根拠は、「自分が中学生のとき、中3からの塾通いで間に合ったから」という程度のことしかありません。

  • 進学指導重点校、進学指導特別推進校、進学指導推進校。
  • 推薦入試における作文と小論文の違い。集団討論の実施。
  • 第一志望優遇措置、併願推薦、併願優遇。
  • 内申基準、再受験優遇、加点措置、入試相談。
  • 制服と標準服の違い。
  • 高大連携や高大接続教育。

これらの用語や仕組みを説明できますか? いまの保護者が高校受験をした時代に、これらの言葉はほとんど存在しませんでした。親世代の経験や価値観が、いまの中学生や高校受験に結びつくとは限らないのです。

「みんなが都立だから、ウチも都立」でいいのか?

「みんなが都立高校へ行くのだから、ウチの子も都立高校でいい」という見方も、実は常識ではありません。「都立に合格できないヤツが行くのが私立だ」というのも偏見です。

たしかに都内の公立中学校卒業生の約6割は都立高校を選びます。しかし、小中学校から私立校に通う児童や生徒もいるため、都内における全日制・定時制の高校生のうち約6割が私立高生なのが事実です。

都立高校と私立高校のどちらが優れているかを、ここで論じるつもりはありません。

ただ、保護者の安易な思い込みは、子どもたちの未来への可能性や将来への選択肢をかえって狭めていると、常々感じるのです。

結論。

塾通いは中3からで間に合うか。夏からでいいか。部活引退後で間に合うか。その答えを求めて検索し、このページにたどり着いた方も多いでしょう。

答えは否。間に合いません。

情熱と粘り強さをもって、高校受験に臨んでください。