毎年、多くの中学校・高校へ足を運んでいます。年間でのべ20~30校でしょうか。進学塾向けの学校説明会が中心ですが、受験生・保護者など一般対象の説明会に顔を出すこともあります。私立中高は塾向け説明会にもともと熱心です。最近は都立高校でも開くようになりました。

そんな説明会で注目しているのは、

  1. 校長先生のお話
  2. 生徒たちの生の姿
  3. 塾生に本当におすすめできるか。

という3点です。

校長の話から、学校そのものが見えてくる

どこの学校あれ、説明会は校長先生の挨拶から始まります。

「先日、中学生の市内大会にこっそり足を運びましてね、これが面白かったんです。卓球部だったんですけどね。うまい生徒、へたな生徒、それぞれいても、勝つために全力を尽くしている。我が校は決勝で惜しくも負けてしまったんですが、いやぁ、よく頑張っていた。気持ちよかった。それだけでもうれしかった」

有名大学の付属中学・高校のトップでありながら、いつも感慨深げに生徒たちの日常やおしゃべりをゆったりとお話ししてくれる校長先生もいれば、

「本日は我が校の説明会にお越しいただき誠にありがとうございます。さて今春の大学入試結果ですが、国公立大学○名、早慶上理が○名で、前年度と比べるとプラス○名。東大には○人挑戦したんですが、全員不合格。浪人するそうなので、現浪合わせて○人が来年の東大ノルマです…」

というように、生徒を数字や偏差値でしか語らない人気都立高校の校長もいます。もちろん校長の人柄にもよるのでしょうが、やはりトップに立つ人間です。その学校を代表している声だと受け止めています。

平日午前こそ、生徒の本当の姿が見えてくる

受験生・保護者向けの説明会が土曜日に行われるのに対して、多くの塾向け説明会は平日の午前中であることが多く、校内見学では生徒たちに予告されていないためか、生の授業風景を見ることができます。

先生の説明にしっかり耳を傾けている女子。板書にないことまでノートを取ろうとしている男子。教科書とノートのほか、大きめのペンケースや電子辞書まで机の上に所狭しと並べ、真剣に授業を受けている姿には、とても好感が持てます。

その一方で、前方の席でありながら突っ伏して眠っている男子。後ろの方で気づかれないだろうとスマホをやっている女子。教科書やノートも出さずに、身体ごと横を向いて先生やほかの生徒の発言にツッコミを入れてばかりいる壁際の男子。そういう姿を見ると、どこか腹立たしく、どこか悲しくなります。

多くの学校に足を運ぶことで、そんな生々しい日常もよく見えます。毎年出席している学校では、年々良くないっていることや、年々悪くなっていることの推移も把握できます。

「○○という都立校は、面倒見がいいらしい」
「△△という高校は、生徒会の役員が校内を案内してくれて好印象だった」

中学生やその保護者のそういった評判も、塾向け説明会で、ある意味で抜き打ち検査のように見学してみると、実は正反対だったということも多いです。ネット上の評判や情報は、まず当てになりません。

羽村・青梅からも人気のある某都立高校では、受験生・保護者向けの説明会・授業公開の前日になると、「あすは中学生や大人が来るんだから、キチンとしていろよ」と、普段よりも掃除を徹底させ、先生たちの態度も一変するとか。そして終わってしまえば、ほこりが舞う雑然とした教室に戻り、センセイたちは居眠りしている生徒にも注意しなくなるそうです。

受験生・保護者向けの説明会・授業公開や、文化祭などは、非日常的な光景です。ただ塾生が実際に進学するとなると、現実的な日常のほうがより重要です。できる限り、それを自分の目で確かめ、各校で比較しています。

塾生に学校をすすめる基準

実際に自分の目で確かめてきた中学高校の様子のほか、説明会そのものの内容やカリキュラムなど客観的な情報だけでなく、

「親として、わが子をこの学校に行かせたいか?」
「わが子がこの学校に通うことで、本当に伸びるだろうか?」

という、ごく主観的な意見も添えて塾生やその保護者には学校選びのお手伝いをしています。

私事ですが、わが子は現在、中学1年生と高校1年生です。塾講師である以前に、2人の子どもを持つ親なのです。そんなわが子を安心して預けられる学校かどうか考えてみる。その点では、塾生の保護者の方にとても近く、また共感できることがたくさんあります。

毎日一緒に勉強し、できるようになったと喜んだり、難しい問題に悩んだり、ときには部活動の相談にのったりと、論塾の塾生は、わが子と同じです。そして、わが子が進学するのと同じく、十分に検討して、納得する受験をしてほしいのです。